![]() by 谷崎 聖子
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奄美諸島にうかぶ小さな島、喜界島。 このさんご礁でできた島に来たのは、これで二度目。 今回、どうしても行きたい場所がもうひとつあった。 ![]() 志戸桶にある小さな工場。 ここでは今でも、島の女性たちの手によって 機織の音が奏でられている。 ![]() 「去年はいらっしゃらなかったけれど、 この方が94歳の職人さんなんですよ。」とTwelveseventeenさんが紹介してくれた。 小さな体をゆっくり動かしながら、 おばあさんは縦糸を織り機にしっかりと結びつけていた。 ![]() 大島紬の特徴は、 先染めされた糸がすでに模様を持っていることにある。 漆黒とともに浮かびあがる白い花模様が目に映ると、 背すじまでがピンと張るようである。 ![]() シャトルの中にも、髪の毛よりも細い絹糸が入っている。 この横糸が織り込まれて、はじめて柄が完成する。 そのため、この糸の調子が少しでも狂うと もう柄は完璧にできない。 ![]() おばあさんは小さな体を丸めて、 機を織りつづける。 右へ左へ糸を送り、パタンと布を叩いて・・・、 そうして疲れたときには、ベッドに横になって休む。 少女のときから始めた機織は、 おばあさんにとって大切な生活の一部になっているのだろう。 ![]() 子どもたちは、まるで手品でも見物するかのように 熱心におばあさんの手の動きを観察する。 去年もこの場で出会ったカツ代おばあさんは、島一番の作り手。 ![]() 機を織る合間に、 人差し指でつっと生地の表面をなでる。 その魔法の指先が、縦糸と横糸を最後に馴染ませる そんな役割を担っている。 ![]() 糸は奄美大島で染められ、 中央の工場から送られてくる。 昔はその図案さえも知らされることなく、 女性たちはどんな絵柄が浮き上がるのか 緊張と好奇心のまなざしで手を動かしていたに違いない。 ![]() カツ代さんが機の手を休めて、こう言った。 「昔はね。会社から仕事のご褒美に、着物をもらったのよ。 せっかくこんな遠くまで来てくれたから、見せてあげるわ。」 大島紬は、島の女性たちには手の届かないほど高価な着物となった。 17世紀には、島の人間は大島を着てはいけないという禁止法まで出されるようになったという。 極上の腕をかけて、世にも美しい布を織りながら、 その着物に袖を通すことができなかった。 どれほどまでの憧れを持って、この布を見てきたのだろう。 ![]() 大島紬の独特の模様は、 もともとハブの革をかたちどったものだと言われている。 泥染めと呼ばれる独特の染色法でできた、 この茶色とも黒とも呼べない色合い。 ソテツの木の鉄分を含む泥と、 シャリンバイのタンニン酸が結びつくことによって生まれた、 南国ならではの深い黒。 「竜の眼」と呼ばれる図案。 ![]() そして取っておきの着物は、 94歳のおばあさんが同僚のカツ代さんのために作ったもの。 「御覧なさい。 ところどころ糸に継ぎ目があるでしょう。 これは大島を織ったときの、残り糸をつないで織ったからよ。」 言われてみれば、所々に 毛玉のような小さな継ぎ目が手で感じられた。 絹の糸を惜しみ、 その小さな糸をつないでこんな着物を仕立ててしまった。 その想いに、胸がいっぱいになる。 ![]() みなが仕事の手を止めて、 私たちを囲んでいた。 「この着物を着させてあげる。」 二部仕立ての着物のスカートが、 Twelveseventeenさんの腰に巻かれる。 まるで現代デザイナーのそれのようにモダンだった。 この仕事場に来たときに感じた、蚊が多かったことや蒸し暑かったことも いつしかすっかり忘れてしまった。 ![]() まるで羽衣のように軽くてしなやかな大島紬。 それでも、これほどまでに美しいのは、 島の女性の憧れと工夫の気持ちが織り込められた着物だから。 ![]() この細い糸がまた沢山集まったら、 どんな素敵な着物ができるのだろう。 また再び、この南の島のアトリエを訪れる日を夢見て、 志戸桶の工場を後にした。 ![]() ▲
by tououzakka
| 2011-09-08 23:44
| Trip
ブダペスト民俗博物館へいってきました。 夏に公募のあった、 民俗学の論文コンテストの式典へ招かれました。 ダンナの書いたハンガリーの墓標に関する論文は、 惜しくも佳作でしたが、 ![]() 民俗博物館の展示を存分に楽しんできました。 19世紀後半の折衷様式で建てられた博物館は、 常設展と企画展がふたつが行われています。 ![]() 常設展は、ヴァリエーション豊かな ハンガリーの民俗衣装の展示からはじまります。 現在の国境が引かれているハンガリーではなく、 歴史的にハンガリー王国のあった、1919年以前の領域内です。 北は今のスロヴァキアから、南はセルビアのヴォイヴォディナ地区、 東はルーマニアのトランシルヴァニア地方と幅広いのです。 ハンガリーの民俗衣装と 一言でくくることができないほどの、 形も手芸のテクニックも実にさまざまのことに、 驚かされることでしょう。 19世紀のロマン主義の影響で、 ハンガリーの象徴となったのが東部の大平原地方です。 地平線が見えるほどの広々とした荒野に、 家畜を放牧する人・・その風景はたくさんの画家によって描かれました。 その風景をいっそう印象的にするのが、 シェパードのコートです。 円形に裁断された革のコートは、 サーキュラースカートのごとく広がった、 見事なドレープに目が奪われます。 ![]() スーチと呼ばれる、 革の刺しゅうはもともと職人の仕事でした。 ロゼッタと呼ばれる、 魔よけともいわれる渦巻きもようが鮮やかです。 ![]() クジャクの目という名のモチーフは、 もっともハンガリー的な模様と美術史家フスカ・ヨージェフは言っています。 ![]() 大平原の衣装として有名なのは、 マチョーと呼ばれるエスニックグループ。 大きなバラや花のサテンステッチが有名ですが、 これも革の刺しゅうの影響と言われます。 なんといっても見所は、 地面にとどくほど長い、男性のブラウスの袖。 赤の花刺しゅうに、細やかなレースで縁取りされた袖は、 女性よりも華やかです。 ![]() その下には、刺しゅうのエプロンがきます。 黒地に色鮮やかな花刺しゅうは、 平らで乾燥した環境の中で培われた 華やかなものへかける想いなのでしょうか。 ![]() スールと呼ばれる、 フェルトを切った飾りもまた、素晴らしい職人の技です。 羊毛を圧縮して、美しい色を施し、 それをカットして花を作る・・。 こちらも大平原を代表する衣装です。 ![]() ハンガリー北部の衣装は、 Xのかたちに巻かれたスカーフがおしゃれ。 白い刺しゅうとドットのカットワークが特徴的です。 ハート型に広がったチュニックの袖も、 女性らしい丸みをもたせています。 ![]() 女性の手には、アップリケのハンカチーフ。 繊細な曲線の美しいアップリケは、 ハンガリー北部に特徴的なテクニックです。 ![]() トランシルヴァニア地方のトロツコーの衣装。 ドイツ系のザクセンの影響が、 髪飾りや銀の胸飾りに見られます。 チュニックの袖の刺しゅうの密集した感じが、 カロタセグのものに似ているようです。 ![]() カロタセグ地方の飾りベッドも見られました。 バッドカバーとピロカバーには、 イーラーショシュの刺しゅうが見られます。 あの密集と、余白のバランスが、 この刺しゅうの美しさなのではないでしょうか。 現在見られるものには、余白が見られないのが残念です。 ![]() ブダペストの民俗博物館は、 まさに色とりどりのハンガリー文化への扉のようです。 ハンガリーの民俗衣装の豊かさに、 心奪われたら。 ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-12-26 16:52
| Trip
故郷、宮崎の春はもう2月からはじまっていた。 この冬の間、 雪国での生活に欠けていた 太陽の光を、体全体で感じる。 故郷の太陽の光はあたたかかった。 そして、 どこか懐かしい匂いがする空気。 すこし湿って、 やわらかく肌を包んでくれる。 本当に恋しかったものは、 意外と目で見ることのできないものだったのかもしれない。 一番はじめに見つけた春の兆しは、 タンポポ。 それも宮崎では、 今では珍しい和性の白いタンポポが まだ見られる。 ほんのりと黄色い花粉を 真ん中にこすり付けたような。 この白がまぶしい。 ![]() それから、 生目神社のクスの木。 神社のなかの木には、とてつもなく大きなパワーを感じる。 聖域である境内に、 影を落としている大木。 ![]() 3月はじめには満開だった、 堀切峠の山桜。 秋の名残のススキの後ろに、 真っ白い花びらのかたまりが幻想的。 桜が咲くと、 どうしてこんなに気持ちが晴れ晴れするのだろう。 何かを無性にお祝いしたくなる。 ![]() 家の庭に咲いた、 小さなキノコ。 植え込みの影に、 風から太陽の光から身を守るように ふたり、そっと身を寄せていた。 ![]() ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-04-17 15:24
| Trip
バリバリバリ・・・と物凄い音がして、 思わず店の中の人たちの顔をうかがった。 「 これって、雨なんですか?」と母が尋ねる。 島の方がうなづくのを、 半ば信じられない気持ちで眺めた。 店を飛び出してみると、 道路が水しぶきで真っ白。 空から撃ち放たれた弾丸のような、激しい雨。 いつか島の雨の話を聞いたとき、 その大粒の雨に打たれてみたいと思ったのだが、 どうしても外へ飛び出す勇気はなかった。 天のどこかに穴があいているんじゃないか、と思うくらい。 そう、ここはそらが近いのだ。 とある晩の出来事。 星がまたたくので、 島の真ん中にあるサトウキビ畑のなかで 星空を眺めようと、ドライブに繰り出した。 ところが、 街頭ひとつない暗闇の道を進みゆくうちに、 前方が白くにごり始める。 どうやら、高い丘を登っているようだ。 引き返そうと道を下っても、 一向に晴れようとしない視界。 ライトは1mほどしか先を照らさず、 終わりのない夜道を進む。 だんだんと、不安にとらわれる。 ついに看板を見つけたところで、友人に電話。 聞きなれない地名を口に出して アドバイスを受けると、 やっと落ち着きを取り戻した。 やがて10分ほどで 嘘のように霧も晴れ、 元の湾のあるところまで戻ってきた。 それから、早町の宿に戻る途中の サトウキビ畑。 先ほどから、窓を開けて上ばかり眺めていた母が、 「 星空がきれいよ。」とつぶやく。 車を止めた。 ライトが消えると、とたんに暗闇が忍びよる。 車から出て、思わずあっと叫んでいた。 ものすごい星の数。 星くず。 ちいさな光の粒がびっしりと、 黒い空に張りついている。 ふだん見なれた星座を探すのに一苦労するほど。 存在はしているのに 今まで見たことのなかった星たちが、 至るところで瞬いている。 そして、光の粒の合間に 真っ直ぐな一本の筋が通った。 流れ星。 ほんの一瞬だった。 今まで見た、 どんな星空も遠く及ばないこの空。 それだけでも、 ここまで来た価値がある。 そう思った。 自然への畏怖が息づいている ここ喜界島で、 自然の大きなチカラに触れてみませんか。 喜界島の神秘を 感じていただけたら。 ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-03-18 01:50
| Trip
この感じ、 どこかで味わったことがある。 敢えていうなら、 チュニジアのスースにある メディナ(旧市街)の黄土色した壁の細い路地。 それとも、ヴェネツィアの ラビリンスの如く入りくんだ石畳の道。 ![]() 島には、伝統的な サンゴの石垣が今でもよい状態で保存されている。 阿伝(アデン)という有名な地区。 道がこんなに紆余曲折しているのは、 台風を防ぐためだろう。 緑が青々と茂って、 道に闇を落としている。 ![]() その細くうらびれた小道に 誘い込まれるように、入ってゆく。 肩の高さほどのねずみ色した石垣にはさまれた、 わずか60cmほどの間。 まだ太陽が昇ったばかり。 明るい光が照らしていないせいか、 たった一人で見知らぬ土地に入りこんだせいか。 石垣の玄関のむこうに、 家の主の代わりに ぬっとガジュマルの大木が現れると、 恐ろしさに鼓動が早まった。 木が家を食べてしまった。 そんな怪談が生まれてしまいそうな雰囲気。 早足で、そのジャングルを過ぎてしまうと、 また曲がり角。 ![]() 灰色の壁に沿っていくと、 ふと墓地に出た。 家のかたちをした墓石。 ![]() 朝早いせいか、 ひっそりと静まりかえった集落。 本当に人は住んでいるのだろうか? そう考えていたら、 ある石垣の入り口から おばあさんがカマを持って出てきた。 「 おはようございます。」挨拶をして、 なんとなく跡をついて歩く。 分かれ道、私は左の方へと進もう。 ![]() 家の庭から伸びた、南の植物に出会えるのも楽しい。 くるくると渦を巻いた花芯、 八重のハイビスカス。 ![]() 家の標識なのだろうか。 サンゴの石の間に埋め込まれた古い石。 家の玄関先へと続く道を おそるおそる入ってみる。 ![]() 石垣の角に置かれた、 不思議なものに目が釘付けになる。 大きな貝殻と プラスティックフラワーでできた祭壇は、 島の文化を自ずと物語っているようだ。 ![]() ひっそりと静かに呼吸をしている小さな集落、アデン。 サンゴの迷宮のなかに、 そっと足を踏み入れてみませんか。 ![]() サトウキビ畑のそよぐ 喜界島から。 ![]() サンゴの石垣に誘い込まれたら。 ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-03-15 01:55
| Trip
あなたが喜界島へやってきたなら、 ぜひ立ち寄ってほしいのが こちらのイタリア料理の店。 とびきりお洒落な店内には、 カッコイイ音楽があふれています。 そして素敵なお姉さんが、 レトロ・ポップなグラスに冷たいお水を入れて、 運んできます。 もしかしたら、サンゴのお土産もつくかもしれません。 ![]() 「 今から、店長がピザを焼きますよ。 ご覧になりませんか?」 キッチンへと入らせていただくと、 ほら丸い生地がこねられているところ。 ![]() 熟練された手つきが、 あっという間に丸いたねを 平べったく伸ばしてゆきます。 ![]() うすく、うすく・・・。 真っ白の生地が、どんどん伸びていく。 紙のような薄さ。 ![]() 丁寧に丁寧に作られたピザ台を やさしく叩くようにして均等にしたあと、 真っ赤なトマトソースを振りかけます。 ![]() 台が見えなくなるほど チーズをたっぷりとのせて、 薄切りのキノコで彩ります。 ![]() それから、温かいオーブンへ。 このオーブン、 内部は真っ白の素焼きになっているんですって。 石焼のものと変わらないほどに、 カリカリに焼けるんだそう。 注文を受けてからこの間、わずか3分半。 ![]() さあ、焼けました。 ピザは焼きたてが一番ですので、 お皿にのせると、店長自らがテーブルに運んできてくれます。 ![]() 「 まあ、美味しそう!」 急いでお皿に取り分けて。 ![]() サクッと軽い口当たり、 濃厚なチーズとトマトソースのバランス。 キノコはまだ歯ごたえ十分。 こんなに薄いから、 いくらでも食べられそう。 ![]() チーズが糸をひき、 とろりとしている内に食べてしまいましょう。 ![]() スギラ・ビーチで磯遊びをしたあとは、 Moontoneで昼食を。 荒木で夕焼けを眺めたあと、 夕食にしてもロマンティックですね。 ![]() 喜界島でイタリアン・・・ ちょっと心が惹かれたら。 ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-03-14 23:31
| Trip
明るい光が表から差しこんで、 木造のアトリエをやさしく照らしだす。 5、6台の機織が置いてある 広々とした作業場にただ一人いらっしゃるのは、 田中カツ代さん。 ![]() 「 本当なら、何人で作業しているんだけれど、 今はサトウキビの刈り入れ時だから。」 レトロなグリーンの割烹着すがたの 気さくなおば様は、 さっそく織りの見本帳を広げて見せてくださった。 Twelveseventeenさんのご主人さまのお母様が、 ここ志戸桶のご出身とのこと。 ![]() 「 大島紬といったら、 着物の中でも最高級の外出着なんですよ。」と Twelveseventeenさん。 着物の知識のない私に、説明してくださる。 光のすじのように、 細い細い絹の糸がこぼれおちる。 もう、それだけでも十分に美しい。 ![]() 「 昔はたくさん織り手がいたけれど、 今はもう少ないのよ。なかなか根気がいる仕事だからね。」 カツ代さんが機織に向かうその姿は、 まるで演奏をはじめる前のピアニストみたい。 スッと背をただし、心地よい緊張感が満ちる。 ![]() ピンときつく張りつめられた絹糸の束。 先染めであるため、 縦糸と横糸がぴったりと合わないと柄ができない。 神業のような高度な技術を要する。 ![]() この深い濡れたような色は、 泥染めと草木染めによるもの。 黒は黒でも、 どこかライトで明るい色味である。 だから夏着として、 さわやかな着心地なのだろう。 ![]() この小さな糸巻き(クダ)が いくつ空になったら、出来上がるのだろう。 ![]() 足のペダルで上下に動かすと、 縦糸が表、裏と早変わりして うつくしい模様が見え隠れする。 黒の地模様から、 ![]() 白のもようがさっと浮きあがる。 ![]() カツ代さんの手が すばやくヒジュキ(糸巻きの入った木の筒)を送ると、 スッと音を立てて布の上を滑ってゆく。 ![]() もう片方の手がキャッチしてから、 木の板を織られたばかりの布地にたたきつける。 ドンという音が、腹の底に響きわたる。 あの繊細な糸がちぎれてしまわんばかりの、力強さ。 ![]() それから、時々 爪の先でシュシュッと糸をしごく。 「 ほら、ここが合っとらんでしょ。 だから、後から糸を引き締めて合わせないといけないのよ。」 注意してよく見ると、 なるほど小さな十字もようのひとつが、 出ていないようだ。 何ミリの細かい世界。 ![]() その音の繰り返しが、 寄せては返す波のように淡々と流れていく。 「 着物を着る人も少なくなったからね。 バッグや洋服にされることが多いのだけれど、 やっぱり着物として使われるのが一番。」 限りなく薄い絹の織物が、 黒であるということが最高のエレガンス。 暑い夏に、軽くて薄いこの大島紬を着て、 衣擦れの音をひびかせて歩く。 なんて贅沢なことだろう。 ![]() 「 これだけの時間を費やして、 たくさんお金になるわけじゃないけれど。 やっぱり私は、この仕事がすきなのよ。」 ![]() 「 私にとって、今日のこの日は宝物。 私の仕事をこんなにたくさんの人が見に来てくれたからね。」 職人さんが、チャーミングな笑顔を見せてくれた。 ![]() 大島つむぎの魅力を感じていただけたら・・。 ![]() にほんブログ村 ▲
by tououzakka
| 2010-03-13 11:10
| Trip
鹿児島は錦江湾を出てから 船で揺られること、半日ばかり。 さんご礁でできた南の島へついたのは、朝5時前。 真っ暗闇のなかを照らす港の光、 その中に彼女の姿が映し出された。 とうとう、私たちは喜界島へやって来たのだ。 まだ半分、夢のなかのような気持ちで、 暗い夜道で車を走らせる。 宿泊所のそばの浜辺で、おだやかに一日が明けた。 しっとりと潮をふくんだ風が吹きつけてくる。 おだやかな波の音が耳にやさしい。 「 いま、喜界島にいるって ママ、信じられる?」 いつもの口癖で息子がたずねてきた。 ![]() ブログでおなじみのスギラ・ビーチを見たころは、 もう陽が差していた。 生き生きした南国のグリーンも、 真っ白な砂浜も、 限りなく透明でトルコブルー色した海も どこかで見た景色だったのに、 目のまえにあるとどこか違う。 ![]() なまあたたかい空気と吹きつける風、太陽の光・・・ 思わず、海に足を入れていた。 すべてが本物。 そうして、はじけるような色彩をバックにして あの素敵な家族が到着した。 Moontoneの車にナビゲーションされて、 私たちは島の秘密の観光スポットを 次々と目のあたりにする。 追っている車に、 いつしか私が乗っているような不思議な感覚を味わいながら。 美しい海岸は数え切れないほど見たけれど、 このハワイ海岸の雰囲気は特別。 まるで珊瑚でできた造形品のような、 真っ白の立ち枯れた木・・・ そう、これも彼女のブログで出会った風景。 ![]() 化石のような珊瑚の岩の中から、 ドラマチックに現れるクリーム色の砂浜。 そこだけ、ぽっかりと穴が開いたよう。 ![]() 「 ねえ、この珊瑚、 まるでトランシルヴァニアの刺しゅうみたいね。」 母の言葉に目を向ける。 イーラーショシュのびっしりと埋められた、 刺しゅうの図案そのもの。 ![]() 気がつくと、みんな足元ばかりを見ている。 波で打ち上げられた、 真っ白な珊瑚が見つけるために。 ![]() とびきりの珊瑚や貝を見つけると、 彼女もご主人さまも子どもさんたちも すぐに私に差し出してくださる。 喜界島といえば、 美しい蝶が生息していることでも有名。 車道のすぐ横で、ひらひらと舞っている蝶を発見。 大きなアゲハチョウは、その動きもゆったりしていて優雅。 地図で見ると、その場所は 落ちのびた平家が上陸したといわれる浜。 そういえば、平家の家紋もうつくしい蝶の文様だった。 ![]() ただひたすら、まっすぐに伸びる一本道。 サトウキビ畑の緑と茶色がつぎはぎに、 パッチワークされたなだらかな丘。 自転車で風をきって突き抜けたら、 どんなにか気持ちいいだろう。 ![]() 「 ここはね、島で一番高い展望台。 でも私は、世界で一番だと思っているんです。」 喜界島には高い山がない。 それでも、ここから下を見下ろすと 浜はなんて遠いんだろうと思う。 さえぎるものがないから、 ありったけの強さで風が打ちつける。 ![]() 浜のほうへと降りていく途中、立ち寄ったのは 小さなジャングルの中。 林がここでは、植物の生命力の強さで まるでジャングルのよう。 根をいっぱいに張らせて、 大きな手を広げているガジュマルの大木。 樹齢が200年を超えているといわれるが、 ずっとその昔から生きているような、 その存在感。 ![]() 時に、樹は人の体を想わせる。 根っこのカーテンの中に すっぽりと覆われると、 果てしない安心感に包まれるのはどうしてだろう。 旅の終わりは、 ねずみ色した珊瑚の浜。 ふわふわの緑のじゅうたんが彩りを添えている。 何も考えず、ただゆったりと 海の色を眺めているうちに 時間が過ぎていく。 ![]() 「 ここから眺める夕日は、絶景なんです。」 彼女の後姿についてゆくと、 珊瑚の丘が見えてくる。 その日は、あいにく灰色の空だったけれど、 世界の果てにきたような風景には、 こんなどんよりした風景もよく似合っている。 ![]() めくるめく島の秘密に触れた一日。 Moontoneの車のナビと、 素敵な家族といっしょに過ごした夢のような一日。 とびきり澄んだ大地の色と、 おしゃべりする鳥やチョウ、 自然の神秘がいまだに息づいている島へ。 何も考えず、 ただゆったりと自然に抱かれながら・・・。 ようこそ、喜界島へ。 ![]() さんご礁の島に、こころ奪われたなら。 ![]() にほんブログ村 *その日の出来事は、 喜界島在住のTwelveseventeenさんのブログでも、 どうぞご覧ください。 ▲
by tououzakka
| 2010-03-09 03:36
| Trip
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